#スタジアムでの日常 – @U__888

……試合の終わりを告げるホイッスルが、広い空に高らかに響く。

勝てば歓声が。
ガッツポーズ、ハイタッチ、握手、その他諸々、感情の吐露。
一通りの祝福を終えると、人びとはいそいそと三色の傘を取り出し、おもむろに回しはじめる。
仲間と歓びを共有するための、欠かせない儀式だ。

負けや引き分けの時は、人それぞれ。
ため息、励まし、たまに罵詈雑言。これも大小入り混じる感情。
その空間から自分を切り離すかのように、足早にスタジアムを立ち去る人も数知れず。

僕はといえば、その場から動かない。
まず目を閉じて、その日の90分を振り返る。 真正面から、僕らのチームを全身に浴びるのだ。
それは断じて、誰にも邪魔のできない時間だ。邪魔されてたまるものか。

そうして瞼の裏側にチームの勇姿を焼き付け終えたなら、ゆっくりと立ち上がり、一段、一段と階段を降りはじめる。
もう周りに人はほとんどいない。

いつもの東ゲートを出る。
その瞬間から、僕は次の一週間を生きる。 ほかの誰にも触れられない、僕だけのマリノスを抱えて。

text by @U__888
photo by @kazuo_yfm